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理事エッセイ
2015年4月 「古(いにしえ)を訪ねる休日」 理事・副会長 髙橋興三 シャープ株式会社 代表取締役社長


■史跡めぐり
 私は史跡めぐりが好きで、時間を見つけては古墳や神社仏閣を訪ねています。
 史跡めぐりを始めたきっかけは、1980年のシャープへの入社でした。最初の配属先は奈良県大和郡山市にある複写機工場で、そこで16年間、技術者として忙しい日々を過ごしました。新製品の生産を本格的に始めるときは、トラブルが出ないよう直前まで幾度もテストを行います。期待した結果が一向に出ないまま、生産開始日が間近に迫り、その重圧に押しつぶされそうになったことは一度や二度ではありません。そうした中、気分転換を兼ねて、もともと関心のあった古墳や神社仏閣をめぐり始めました。
 ご存じのとおり、奈良県には世界的に有名な古墳や神社仏閣に加え、日本最古の道といわれる山の辺の道(注1)など、歴史的遺産が数多くあります。
 製品開発の仕事に追われて、心身とも疲労困憊の中、残業明けの早朝に職場を出て車で甘樫丘(注2)に向かい、「何とかテストがうまくいきますように」と朝日に祈ったこともあります。たまたま、時を同じくして同僚も近くのお寺で祈っていたようですが、期待に反してテスト結果は相変わらずひどいものでした。ふたりで日頃の不信心を猛省したことなど、今では良い思い出になっています。
 社会人最初のこの16年の間、私は当時住んでいた奈良県にとどまらず近畿一円にまで、時間を見つけては様々な古墳や神社仏閣を求めて積極的に足を伸ばしました。

■古(いにしえ)の鼓動
 史跡の魅力はいろいろありますが、特にその規模には圧倒されます。
 平安時代中期に編纂された児童向けの学習教養書「口遊」(くちずさみ)に、「雲太、和二、京三」という言葉があります。これは当時の大建築を大きい順に表したものだといわれており、一位は出雲大社、二位は東大寺(大仏殿)、三位は京都御所(大極殿)とされています。かつて出雲大社は高さが約50mと、現在の15階建てマンションを超える高さであったことが明らかになっています。そして、それを支える柱は、樹齢数百年の直径1mを超える巨木の柱材を三本、金の輪で束ねたものだといいます。
 また、仁徳天皇陵古墳(大阪府堺市)や応神天皇陵古墳(同羽曳野市)もその巨大さに目を見張ります。いずれも墳丘長が400mを超えており、重機もない時代に、よくそこまで巨大な建築物・建造物を作り上げたものだと感嘆します。当時、どれほど大勢の人がどのような工夫をしてこのような巨大なプロジェクトを進めていったのか、ついつい想像を逞しくしてしまいます。
こうしたこともあって、近畿圏以外でも、出雲大社や佐賀県の吉野ヶ里遺跡、青森県の三内丸山遺跡など多くを訪ね、各地で古の鼓動を感じています。一方、これまで米国駐在の機会が二度ありましたが、南米の史跡に一度も足を運べなかったことは大きな心残りです。その反省もあり、中国の複写機工場に総経理として赴任した際には、休みを利用して多くの史跡を訪ねました。秦の始皇帝陵や万里の長城など、長い歴史を感じさせる史跡を訪ねたときは、その威容にただ圧倒されるばかりでした。このように、史跡めぐりからは大事を成した先人達の柔軟な発想や苦労を肌で感じ取ることができ、日々の仕事に向き合う上で、私に大きな力を与えてくれています。

■温故知新
 JBMIAは、ビジネス機械や情報システムの革新を通じ、オフィスでの新しいワークスタイルを提案していくことを理念として掲げています。洋の東西を問わず、現代社会において職場の生産性向上は極めて重要なことですが、ときには職場を離れてじっくりと日々の仕事を振り返る機会を持つことも非常に大切だと思います。
 「子曰く、故きを温ねて、新しきを知れば、以って師と為るべし」。
 論語には、師となる条件として先人の思想や学問を研究するよう述べた言葉があります。昨今はドッグイヤーやマウスイヤーといった言葉さえ聞かれなくなりましたが、それほど世の中の流れが速いということなのでしょう。「温故知新」の精神で、古(いにしえ)を訪ねる時間を大切にし、明日への活力にしたいと思っています。

(注1) 山の辺(やまのべ)の道:奈良県三輪山から春日山に続く大和古代道路の一つ。
(注2) 甘樫丘(あまかしのおか):奈良県橿原市にある標高145mの丘。蘇我蝦夷・入鹿の邸があったと言われている。
 
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