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理事エッセイ
2017年4月 「コミュニケーション雑感」 理事・副会長 真栄田雅也 キヤノン株式会社 代表取締役社長 COO

 
 昨年の3月に、キヤノン株式会社の代表取締役社長COOに就任し、同5月、JBMIAの理事職に就くことになりました。業界発展のために力を尽くす所存でありますので、JBMIA会員各社の皆様、ならびに関係者の皆様におかれましては、何卒ご指導、ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

 私は入社以来、カメラの開発や事業に関わり、写真産業に携わってきましたが、事務機械産業も写真産業も、その目的は本質的には同じなのではないかと考えています。それは、人と人とのコミュニケーションをより良いものにする、ということです。

 今を遡ること7万年前、アフリカで暮らしていたホモ・サピエンスが海を渡り、世界中に広がっていきました。その末裔である私たちは、他の生物種を抑えてその勢力を拡大し、地球環境に影響を与えるまでの存在になりましたが、その要因の一つに、コミュニケーション能力の高さがあると言われています。

 どんな動物も何らかの言語を持っており、ミツバチやアリのような昆虫でさえ食物のありかを互いに伝え合うことができ、類人猿やサルを含めて多くの動物は口頭言語を持っています。
 では、ヒトの言語は何が特別なのでしょうか。これには諸説ありますが、そのひとつは柔軟であるというものです。ヒトは音声や記号をつなげることによって、異なる意味を持った文を無数に生み出すことができます。
 また、ヒトの言語は、周りの世界の情報を共有する手段 ― いわば「うわさ話」― が発達させたという説もあります。人間は本来、社会的な動物ですから、集団の中で誰が信頼できるかという情報をもとに、協力関係を築いていったとするものです。

 そして今、このヒトの持つコミュニケーション能力の高さが、再びクローズアップされてきているように思います。その背景にあるのは、テクノロジーの急激な進化です。特にここ20年間の技術の進化はすさまじく、その中心にあるのはInformation & Communication Technology、ICTです。
 ICTの進化によって、コンピューターの性能が驚異的に向上し、インターネットが進化して、我々のビジネスのやり方やワークスタイル、また組織のあり方などに大きな変革をもたらしつつあります。しかも、この進化は指数関数的で、今後も変化のスピードは加速度的に速まっていきます。
 10年後には、人工知能(AI)の進化によって日本の労働人口の約半分がAIなどに代替できるとされ、2045年にはAIが人間の知能を上回ると主張する人も出てきています。現在、人が関わっている仕事の大半は、AIによっていずれ自動化されていくことでしょう。

 では、そうなったときに、人間にできて、AIにできないこととは何なのでしょうか。私はそれは、これまでにない新しいアイデアやコンセプトを生み出すことではないかと思います。
 コンピューターは業務を効率化したり、生産性の向上につなげたりすることは得意ですが、イノベーションを生み出すようなことは不得手です。イノベーションの源泉はやはり人であり、イノベーションを起こすには、時と場所はもちろんですが、人と人との組み合わせが非常に重要な要素となります。

 最近では、テレビ会議システムやグループウエア、 SNSなどを使用すれば、場所やデバイスに関係なくコミュニケーションできるようになってきていますが、それでもやはり、最終的には自分自身で現場に足を運び、見て、聞いて、感じることがきわめて重要であると思います。
 その代表例がシリコンバレーです。シリコンバレーには、世界中から異質な人々が大勢集まってきますから、事業を進めるときに味方になってくれそうな人と知り合える機会が数多くあります。また、他社の事業構想や開発動向といった「うわさ話」もあちこちで聞くことができ、その場で関係者同士が意気投合して、新たなビジネスが生まれることも少なくありません。
 今はまだリアルにはかないませんが、ネット上のコミュニケーションも、IoT時代の到来とともに、扱うデータの量や種類が爆発的に増え、はるかに高品質なものになっていくことと思います。近い将来には、文字や画像、映像、音声といった情報に加えて、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚といった人間が持つ五感情報が取り込まれていくことも想像に難くありません。

 私の好きな言葉のひとつに「A rolling stone has no moss.」というものがあります。この言葉の解釈は欧米で正反対で、英国では「落ち着かずコロコロ変わり続けると何も身に付かない」というネガティブな意味ですが、米国では「絶えず活動している人は精力的で魅力にあふれている」というポジティブな意味になり、私は後者の意味でとらえています。進化の源泉は変化であり、人も産業も変わり続けなければ進歩はありません。
 今後、指数関数的に進歩を遂げるテクノロジーは、そのスピードをますます速め、ビジネスを取り巻く環境もダイナミックに変わっていくことでしょう。しかし我々には、事務機械産業に携わる者として、この変化をしっかりとらえ、お客様のビジネスの生産性および創造性の向上に貢献するという責務があります。今後も恐れることなく自身の破壊と創造を繰り返し、変身し続け、お客様ならびに業界の発展に寄与していきたいと思います。

                                                                                以 上
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