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理事エッセイ

2020年7月
「ニューノーマルに向けて」 理事・副会長 野村勝明 シャープ株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 COO


 「東京オリンピックの開会まであと何日」、本来であれば今頃、日本中、さらには世界中がこのような話題で持ちきりとなり、人々が期待に胸を膨らませていたことと思います。もちろん、私もその内の一人であったに違いありません。

 ところが、新型コロナウイルスの世界的流行によって、3月上旬以降、欧米を中心にロックダウンが実施され都市機能が停止し、下旬には東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定しました。さらに、4月には日本においても緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出自粛を余儀なくされるとともに、店舗の営業自粛やイベントの中止など、経済活動が制限され、私たちの日常があっという間に奪われてしまいました。

 日本の緊急事態宣言は5月下旬に解除されましたが、この間、昼夜を問わずウイルスとの闘いの最前線で奮闘され、今もなお、人々の安全のために懸命に努力して下さっている数多くの医療従事者の皆様には、本当に頭が下がる思いです。

 これから私たちは、ウイルスによって奪われた日常を少しずつ取り戻していくことになりますが、これは単に“これまでの日常”に戻るのではなく、人との物理的な距離を取り、接触を避け、衛生管理を徹底するなど、ウイルスと共生する“新たな日常”、つまり、 “ニューノーマル”を模索し、創り上げていくこととなります。

 例えば、私たちの日々の暮らしの中では、eコマースやオンラインを活用した様々なサービスがこれまで以上に拡大していくことでしょう。また、働き方においても、在宅勤務や遠隔での会議が当たり前になるなど、旧来型の対面式、紙ベースの働き方から、インターネットやクラウドを活用したオンラインでの働き方に大きくシフトしていくことが考えられ、こうしたビジネススタイルの変化は私たちの業界にも大きな影響を及ぼすことが予想されます。

 JBMIAは、1960年、まだ日本の事務機械産業が国際的に極めて脆弱であった中で発足し今年で60周年、還暦の年を迎えましたが、奇しくも、この「新しく生まれ変わる」と言われる節目の年に、私たちは大きな転機を迎えることとなりました。

 こうした中にあっても、私たちが社会に必要とされる存在であり続けるためには、今こそJBMIA会員企業各社が「ビジネス機械・情報システムの継続的な革新を通じて、新しいワークスタイルを提案し、活力あるグローバル社会を創る」という理念に立ち返るとともに、私たちの英知を結集し、“ニューノーマル”の時代にあった革新的な働き方など、新たな提案を続けていくことが重要だと考えています。

 一方、世界が未曽有の危機に直面している中で、当社としても何か社会に貢献できることはないかと考え、3月下旬より、三重工場の液晶パネルを製造していたクリーンルームを活用し、マスクの生産を開始しました。これは当社にとって全く畑違いの取り組みであり、手探りでのスタートとなりましたが、今では多くの消費者の方々からご支持いただいており、また多数のあたたかい応援のお言葉も頂戴しています。これに限らず、今後も引き続き、企業活動を通じて様々な面で社会に貢献してまいる考えです。

 私自身、先の定時株主総会の承認を経て、社長執行役員兼COOに就任しました。決意も新たに、会社の為、業界の為、社会の為に、全身全霊で職務に取り組んでまいりたいと思いますが、このためにはまず何よりも、健康が第一だと考えています。

 私は以前より、身体のケアを目的にウォーキングを日課としており、「1日8,000歩以上、一週間で70,000歩」を自らにコミットし、継続しています。皆さんも一日の歩数を計測したことがあるかと思いますが、コンスタントに平均1日1万歩を達成するためには、相当意識的に歩かなければなりません。ですから、平日は会社に少し早く出社し敷地内を歩いたり、用のある職場には直接出向いたりと、日々歩数稼ぎに苦心していますが、こうした中で社員たちとコミュニケーションを取る機会が増えるなど、健康管理以外にも良い影響が出ており、今では日々の楽しみの一つになっています。

 2020年は波乱の幕開けとなり、未だウイルスとの闘いの渦中にありますが、私は、人類は必ずこの闘いに勝利すると確信しており、また、遠くない将来、再び世界経済に活力が戻り、新たな成長の道を歩み始めるものと信じています。そして、その日が一日も早く訪れるよう、私自身も微力ながら貢献してまいりたいと思います。

以上