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理事エッセイ

2025年8月
『哲学を持って生きていきたい。日本を元気にしたい。』 理事・副会長 錦織 弘信 東芝テック株式会社 代表取締役社長 
                                                                                            

 私は社会人としての人生を1980年に富士通から開始し、2009年に当時責任者として携わっていた事業(ストレージ)の東芝への売却で、富士通から東芝へ移っております。会社人生を一言でいうと、「富士通がビジネスの原点、東芝が人生の転機」です。
 2019年1月に東芝を代表して、当時の世耕経済産業大臣以下、経団連の方々とイスラエルを訪問しました。その際、ネタニヤフ首相、イスラエルのベンチャー企業家とのミーテイングに参加しましたが、その後のランチミーティングでそのベンチャー企業の一人から言われた次の言葉を、今も鮮明に覚えています。
「日本は平和ボケ(Peace-Addicted)でないか、大丈夫か?」
あまりにもはっきりと言われたので、ショックでもありましたが、そのような見方をされている現実をかみしめ帰路につきました。
当時、「平和ボケと言われるのは何故か?」と考えましたが、私がドイツ駐在時代に尊敬していたドイツの大企業の取締役から言われた言葉を思い出しました。
 その方の言葉は、
「哲学を持つことが大事だ。政治家ならこの国をどうするか、経営者ならこの会社をどうするか、その際社長は社員だけでなく、その家族にも責任があることを自覚するべきだ。」
 私はこの言葉を意識しながらここまで何とかやってきましたが、2009年に富士通から東芝に移った時の自分の判断にもつながっています。富士通時代に携わっていたストレージ事業が赤字で東芝に買収される際、私自身が「富士通に残るべきか、東芝にいくべきか?」を一瞬悩んだことがありました。最終的に工場を含めた8、000名と共に東芝に移ることを、誰にも相談することなく決断しました。その理由は尊敬するドイツ人から言われた前述の「経営者は社員への責任はもちろん、その家族にも責任がある」、つまり “8,000名× 3” の責任と思い決断しました。東芝への異動後、一部メディアから “一度死んだ身” と表現されましたが、今振り返ると良い判断をしたと思っています。そういう意味で繰り返しになりますが、私にとって富士通は11年半の海外駐在も含め、”ビジネスの原点“、東芝は ”人生の転機“ なのです。
 富士通に29年、東芝にもすでに15年となりますが、現在は東芝テックで “ビジネスモデルの変革、そのためのカルチャーの変革” に挑戦しています。「東芝テックの特徴であるグローバルトップのシェアを持つリテールとワークプレイスの事業領域で、顧客基盤や営業・保守網に基づいたタッチポイントを最大限活用し、お客様やパートナー様との ”共創“ により新たな価値を創出していきたい。」 と考えています。これは私の社長就任時(2020年6月)からのビジョンです。タッチポイントにあるデータを収集し、それをプラットフォームに保存し、利活用してソリューションをプラットフォーマーとして提供したいというものです。しかし、口で言ったり、その想いを絵にするのはある意味容易ですが、実際のところ ”EXECUTION“ (実行)で大変苦労しています。一人ではできない、だから東芝テックグループの経営理念である 「 ”共創“ 、ともにつくる、つぎをつくる。」 で成し遂げたいと思っています。最終的に私たち東芝テックグループは、お客様やパートナー様と共に「流通業界、オフィスを変えるにとどまらず、広く社会課題を解決する一企業となり、日本を元気にしていきたい。」と考えています。これは “哲学” ”オモイ“ だと思っています。
 ここでJBMIAについて少し触れます。在宅勤務や新しい働き方でプリンターによる印刷量は減少傾向となるでしょうが、私たちの持つ “モノづくり力” と市場における存在感(日系企業のビジネスシェア、約85%)を維持していきたいと切に思います。プリンティング産業のようにグローバルで存在感のあるものは、今や日本には数少なくなってきているのも現実です。複合機はサーバーとしてハブ機能を持つわけで、ここから働き方改革につながる業務最適化のソリューション、具体的にはオフィスのあらゆるデータをクラウドでつなぎ、ワークプレイスの効率化を実現していきたいと考えています。これは正にデジタルトランスフォーメーションです。JBMIAは創立60年を超える歴史ある業界団体ですが、競合を超えたさらなる連携で日本の力を示し、日本を元気にすることに貢献していきたいと思っています。
 
 最後に哲学っぽく終わりたいと思います。私の大好きなサッチャー元英国首相の、哲学の名言を綴ります。
『考えは言葉となり、言葉は行動となり、行動は習慣となり、習慣は人格となり、人格は運命となる。』