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理事エッセイ

2026年5月
「多様化する ”はたらく” と、私たち企業に求められる役割」 理事・副会長 大山 晃 株式会社リコー   代表取締役 社長執行役員・CEO
                       


働く場所や時間、ツールなど、働く人を取り巻く環境は、かつてないほど多様化しています。オフィスを前提とした働き方から、場所に縛られないハイブリッドワークへと広がり、業務においても、デジタル技術・AIの進展を背景に、プロセスや仕事の進め方が大きく変化しています。こうした働き方や業務の在り方が変化し続けることは、社会の前提になりつつあります。

事務機械業界においても、ペーパーレス化やハイブリッドワークの進展により、従来のビジネスモデルの前提が大きく変わりつつあります。プリントを中心とした価値は今後も重要である一方で、それだけに依存しない視点が不可欠です。「お客様の“はたらく”に向き合い、その質をいかに高めていくことに貢献できるか」という問いに向き合いながら、新たな価値を提供し続けていくことが重要になっています。

その前提として欠かせないのが、私たち自身の変革です。環境変化のスピードが増す中で、過去の成功体験や慣習に安住することは、大きなリスクになりかねません。価値創出を続けるためには、私たち自身が変わり続け、変革を加速していく姿勢が問われています。

私が経営において大切にしてきた姿勢の一つに、幕末の陽明学者である山田方谷が著書『理財論』で説いた「事の外に立ちて 事の内に屈せず」という考え方があります。身内の事情や論理に流されることがないように、内部の状況を理解しつつも一歩引いた視点で物事を見る。そうすることで初めて、業界や社会全体の流れの中で、自らがなすべきことが見えてきます。目先の都合ではなく、大局的な視点で本質を問い続けることが、変革を進める原動力になります。

変革を支えるもう一つの重要な要素が、「多様性の活用」です。異なる経験や専門性、価値観を持つ人材が集い、それぞれの意見を尊重しあう環境は、新たな発想や創意工夫を生み出します。多様性は単なる理念ではなく、企業の競争力を高める実践的な力です。多様な視点が交わることで、これまで見過ごされてきた課題や潜在的なニーズに気づくことができ、結果として提供価値の質が高まっていきます。

複合機は、日本の誇る素晴らしい商品であり、それがあったからこそグローバルのネットワークが築けたことは、私たち事務機械業界に共通する大切な財産です。今後は、このグローバルに広がる多様な人材や知見を、これまで以上に積極的に活かしていくことが重要になります。

また、業界全体として変革のスピードを高めるためには、互いに切磋琢磨しつつ、健全な競争を通じて技術や価値を磨き合いながら、業界としての提供価値を高めていく。その積み重ねが、社会からの信頼につながっていくと考えています。

多様な力が組織の中で活かされ、価値として結実し、それが社会に還元されていく。そうした好循環を生み出すことこそ、私たちが果たすべき役割であり、責任です。これからも多様な声に真摯に耳を傾けながら変革を加速し、業界全体の価値向上と社会への貢献に繋げていきたいと考えています。


                                                             以上