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理事エッセイ

2026年8月
「ボールドネス(大胆さ)で大きな挑戦を」 ブラザー工業株式会社 代表取締役社長 池田 和史

2024年6月にブラザー工業株式会社の代表取締役社長に就任し、2025年5月よりJBMIAの理事を拝命いたしました。JBMIA会員各社の皆様とともに、業界のさらなる発展に微力ながら貢献してまいりたいと存じます。ご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

ブラザーグループは1908年にミシン修理業から始まり、家庭用ミシン、プリンター、ファクス、複合機、工作機械、産業用プリンターなど、時代の変化に合わせて事業領域を拡大してきました。世界約40の国と地域に拠点を持ち、海外売上比率は8割を超えています。

私自身、1985年の入社以来、キャリアの半分を販売の現場で、もう半分を管理系の部門で過ごしてきました。ドイツで4年、アメリカで7年の海外駐在経験も含め、現場でお客様や仲間と向き合い、管理部門で長期的な視点から経営を考えるという両輪を大切にしてきました。現場で得た「お客様の声に真摯に耳を傾けること」、そして管理部門で培った「全体最適と長期的視野での経営判断」の双方が、私の経営の根幹になっています。

近年、事業環境の変化はますます激しくなっています。既存事業の延長線上に未来はありません。だからこそ私は「ボールドネス(大胆さ)」、すなわちこれまでの枠を超えた大きな挑戦が今こそ必要だと強く感じています。誰も手掛けていない新しい分野や難しい課題にも、失敗を恐れずに踏み込んでいく姿勢を大切にしています。

行動経済学では、人は「損失」の方が「利益」よりも強く印象に残り、それを避けようとする傾向があると言われます。しかし、ブラザーグループの強みは、失敗を繰り返しても、次の挑戦に踏み出せる風土にあります。もちろん、やみくもにチャレンジすれば良いということではありませんが、少し長い目で見て、誰も手掛けていない新しいことに思い切って挑むことが、やがて大きな成長につながると信じています。失敗しても、その経験を積み重ねることで、いつの間にか自分自身も組織も確実に成長しているものです。

現場の従業員やお客様の声を経営に反映させることも、私がずっと大切にしてきたことです。現場からのフィードバックを経営判断の材料とし、現場主義を徹底することで、組織全体の成長につなげてきました。一人ひとりが挑戦し、学び続けることで、企業の持続的な進化が生まれると確信しています。

企業の成長において、何よりも「人」の成長が不可欠です。加えて、これからの時代は「人」と「テクノロジー」の両輪がますます重要になってきます。特に最近は、毎日のように新聞でAIやサイバーセキュリティの記事を目にし、社会全体が大きな変革期にあることを実感しています。

ブラザーグループでも、AIの可能性を模索しながら、現場や開発部門を中心に「AI Everywhere.」を合言葉に、AI活用プロジェクトを推進しています。従業員が主体的にAIを学び、現場の課題解決に活かす取り組みを進めており、製造現場での自動化や検査精度の向上など、さまざまな成果が生まれています。こうした試行錯誤を重ねることで、AIは新たなビジネスチャンスとなり、私たちの競争力を高めています。

今後、2040年や2050年といった長いスパンで未来を見据えたとき、AIをどう活用し、どのように企業や社会が変化していくかは、まさに新たな「ボールドネス」な挑戦だと考えています。AIと共存し、使いこなす力を身につけることが、これからの成長の鍵となるでしょう。

経営の現場に立つ中で、私が常に問い続けてきたのは、「ブラザーグループが常にお客様や関係するすべての方々に誠実に向き合うこと」「全世界の従業員全員が誇りをもって働き、将来に大きな希望がもてること」「結果、信頼されるグローバルカンパニーとして成長し続けること」という3つの思いです。
これからも、変化を恐れず、大胆に挑戦し続ける姿勢を大切に、現場の声に耳を傾けるとともに、AIなど新しい技術も積極的に取り入れながら、ブラザーグループとして新たな価値を社会に提供し続けていきたいと考えています。