今年(2015年)の6月に、カシオ計算機株式会社の社長に就任いたしました。JBMIA会員各社の皆様には何卒ご指導を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
1957年の創業以来、58年間続いてきた創業者世代による経営を受け継ぐことになり、責任の重さを実感しております。これまで蓄積された会社の良い資産を受け継ぎながら、時代の変化に対応していくことが私の役割だと考えています。
ユーザーニーズを重視したお客様との「共創」へ
弊社の経営理念は「創造 貢献」です。今までになかった、しかも誰もが必要としているものを創造することによって、世の中に貢献するという意味です。
弊社はデジタル技術を使って、電卓、電子時計、電子楽器、電子辞書、デジタルカメラなどの、今日の人々の生活で日常的に使われている製品を提供してきました。また急速な発展を遂げた半導体技術を駆使して、これらの製品の小型・軽量・省電力化を進めて性能を向上させ、また新しい機能を次々に開発して市場を拡大してきました。
しかし現在、社会は物質的に豊かになり、デジタル製品の浸透も進んでいます。新しい機能の提供と性能の向上だけでは、市場が成長しなくなってきていると感じています。時代が変わり、ビジネスモデルもグローバルで変化しています。また日本の社会は高齢化が進み、経済成長期と同様のペースで市場を成長させることは難しい状況にあります。
このような環境のもとでは、お客様と対話しながら、ともに新しい商品を生み出していく「共創」のスタイルを取り入れていくことが必要ではないでしょうか。お客様との「共創」によって、さまざまな市場においてお客様の持つニーズをつかみとり、最適な手段を使って解決することで新しい市場を生み出すことができます。弊社の具体的な事例を掲げますと、従来は「電卓」「電子辞書」といった製品ごとに開発や営業を展開していましたが、今後は「教育市場」のような、接するお客様を基準にした事業展開に変更していきたいと考えています。つまり教育の現場の方々との接点から、現場で求められているニーズをくみ取り、弊社の提供できる製品やコンテンツやサービスを柔軟に組み合わせて解決していくということです。
お客様に「オ・ハ・イ・オ」を届ける
弊社はお客様へのカシオらしい商品の提供によって「オ・ハ・イ・オ」を常に感じていただきたいと思っています。これは「面白い」「初めての」「意味のある」「驚きのある」の頭文字です。1964年の東京オリンピックの時に国立代々木競技場の建設に携わって丹下健三氏に師事し、80歳を超えた現在も建築家として活動を続けておられる近澤可也氏の言葉です。近澤氏は、自分の関わるプロダクトでは必ず「オ・ハ・イ・オ」を満たすことを心がけているそうです。これはカシオらしい商品であることを表す定義でもあると私は思い、深く共感いたしました。それまでにないユニークさと新しさと驚きがあり、しかもお客様が実際に生活の中で使う意味のあるものでなければならないという近澤氏の考え方は、まさに弊社が掲げる「それまでになかった、誰にとっても必要なもの」と相通じるものだと思います。
お客様との絆を保つ
お客様との対話の基になるのは、お客様との絆です。メーカーは何よりもこれを大切にすべきだと思います。迅速で行き届いたサポートや、信頼できる品質は当然のことながら、製品のユーザーインターフェイスも重要な要素だと思います。たとえば時計の新製品のボタンの位置を従来の製品と違う位置に突然変えてしまったら、従来の位置に慣れていたお客様は違和感を感じて離れてしまうかもしれません。お客様との絆を保つためには、継続性、一貫性が大切だと思います。
市場にはお客様の他、製造や販売、広告やアフターサービスなど、多くの方々が携わっておられます。市場を創造したメーカーには、ステークホルダーの皆様とともに継続的に発展を遂げていく社会的な責任があると私は考えています。JBMIAにおいても、生み出した新しい市場を守り、育てながら、社会とともに発展を続けていけるような活動をおこない、ともに業界の発展を目指していきたいと思います。
今後とも何卒、よろしくお願い申し上げます。