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理事エッセイ

2019年7月
「大阪で、世界の未来をつくる」 理事 伊奈憲彦 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 代表取締役社長


 2017年4月に京セラドキュメントソリューションズ株式会社社長に就任し、翌年5月よりJBMIAの理事に就かせて頂いております。JBMIA会員各社の皆様と業界発展のために微力ながら貢献していく所存ですので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。また、このたびはエッセイを書く機会を頂き、大変光栄に思っています。

 「大阪で、世界の未来をつくる」
 これは、今年6月に開催されましたG20大阪サミットのキャッチコピーです。
 会員各社の多くの企業の皆様が東京に拠点を構えておられる中、大阪に本社を構える数少ない企業の一つとして、この機会に「大阪」について書いてみることにしました。

 私は元々、愛知県の知多半島出身、大学も東京の大学を卒業しました。そのため、愛知県より西の地域にはあまり馴染みはありませんでしたが、30年以上前に、縁がありまして大阪の企業に就職しました。30年前の大阪は、東京との相対で、今よりも活気があったと記憶しています。大阪がもっと元気で、活況であれば、日本経済の発展に必ず好影響を与えると考えていること、そして、私自身が「大阪」への愛着、発展に貢献したいという思いが日に日に強くなってきましたことも今回のテーマ選定の背景にあります。

 皆さんの「大阪」のイメージはどのようなものでしょうか?正直、私は大阪に来る前は少々「怖い」ところという印象をもっていました。ところが、実際は安全で働きやすい街で、首都圏と比較すると通勤は混雑が少なく快適なところです。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、英国・エコノミスト誌の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」が発表した「世界で最も住みやすい都市ランキング2018」で、大阪は、ウィーン、メルボルンに次いで3位にランクインしました。この調査は安全性、医療、文化・環境、教育、インフラの5項目で評価されるもので、大阪については、公共交通機関の品質や利便性、低い犯罪率が証明する安全性が上位にランクインした理由と言われています。
 また、歴史に目を向けてみますと、大阪は大きな川があり、海に面していたことから、京の都との主要経路となり、古くから経済的にも文化的にも発展してきました。また、太閤、豊臣秀吉が居城した大阪城、そして、NHKの大河ドラマ「真田丸」で放送された真田幸村のゆかりの場所はよく知られています。そして、さらに歴史を遡ってみますと大阪城のすぐ近くにあります難波宮では、乙巳の変以降、元号の始まりである大化の改新の革新政治がおこなわれていました。その他に、古い旧跡も多くあり、その代表的なものの一つとして、大阪初の世界遺産となりました『百舌鳥・古市古墳群』があります。

 京セラドキュメントソリューションズは、大阪城と大阪冬の陣で真田幸村が陣を築いた真田山との間にある大阪市中央区玉造に本社を構えております。この地で研究開発、本社機能の業務を行いながら、地域貢献として様々なことに取り組んでおります。地道な活動としては地元の小、中学校での「理科出前授業」や「職業講話」の実施、そしてユニークなものとして「なにわの伝統野菜」の復活にも取り組んでいます。これは、生物多様性保全の取り組みの一つで、江戸時代以前から大阪で栽培されていたもので、今では店頭でみかけなくなった「なにわの伝統野菜」を復活させることを通して、消えゆく野菜の遺伝子を保全する活動です。最初に栽培に取り組んだ「玉造黒門越瓜(たまつくりくろもんしろうり)」は、江戸時代に、ちょうど当社の正門前辺りにあった大阪城玉造門(黒門)近辺で栽培されていた越瓜で、当時はぬか漬けにしたものが名物でした。そして、この活動を広げ、これまでに「勝間南瓜(こまつなんきん)」、「天王寺蕪(てんのうじかぶら)」、「田辺大根(たなべだいこん)」などの「なにわの伝統野菜」を会社の敷地内で栽培しています。収穫したものは当社の夏祭りで地域住民に振舞ったり、近所の福祉施設に提供したり、社員食堂の食材としても活用しています。
 地域に根ざした地道な活動の一方で、大阪発のグローバルな取り組みへの貢献活動として、大阪への万博誘致、G20大阪サミットのサポートを行ってきました。大阪万博誘致では、「2025日本万国博覧会誘致委員会」のオフィシャルパートナーとして協賛し、当委員会の運営を支援するため、ドキュメント機器の提供とサポートを行いました。また、G20大阪サミットの成功に向け、会場で稼働する複合機、プリンターの管理を24時間体制で臨み、サミット関係者や世界各国から集まるプレス関係者の方々の円滑な業務遂行を全面的にサポートしました。

 ところで、このG20大阪サミットで興味深く、冠に「大阪」がついた事項の宣言が2つありました。一つ目は、海洋汚染の原因となっているプラスチックごみについて、新たな汚染を2050年までにゼロを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」宣言、そして、二つ目は、データの自由な流通を促進するために新しい国際ルールを作る新しい枠組の「大阪トラック」宣言です。まさに、「大阪で、世界の未来をつくる」動きです。
 この「プラスチック」問題は我々“ものづくり”を行う企業にとって責任ある課題です。また、ドキュメントを扱う我々の業界にとって「データ」の取り扱いはまさに本質に関わる課題です。このように我々の業界に関連する宣言が「大阪発」で発信されています。
 さらに大阪の世界的行事として、2025年には大阪万博が開催されます。この万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。人工知能(AI)や仮想現実(VR)など21世紀の最先端技術を活用した医療・健康、スポーツや娯楽などの、新ビジネスを一堂に集め、世界の人々に経済・社会の未来像を示すことをテーマにしています。これも、「大阪で、世界の未来をつくる」動きです。人工知能(AI)や仮想現実(VR)は我々の業界の発展に欠かすことのできない最先端技術です。

 これら世界の未来に関わる課題、最先端技術開発に積極的に取り組み、また、大阪に本社を構える企業の一つとして、大阪を愛し、伝統を継承しながら、大阪、日本、そして、ドキュメント業界の発展に貢献していくことで、「大阪で、世界の未来をつくる」一翼を担っていきたいと思っています。